昨日の本ブログにて、ヤフオク!で長いこと狙っていた時計を他の人に掻っ攫われて悔しいでもどこかホッとしている、といった趣旨のことをぶつぶつ申し上げました。
が、読み返したところ、だいぶ舌足らずであった。もっとこう、少しでもみなさんの共感を得られるよう、僕は努力しなければならなかったのではなかろうか。反省しました。やり直させてください。
ということで、さあみなさん目を閉じて。大きく息を吸って。吐いて。さあ、想像してください。
あなたの名前は矢風奥夫(やふう・おくお)。イカしたティーンだ。
矢風奥夫ことあなたには、前々から気になっている複数の幼馴染がいます。そうです、複数です。1人ではない。ここでは3人としておきましょうか。タイプはそれぞれ違う3人。だけれども、みんな違ってみんないいのだ!くぅ〜。
注) ここで言う「幼馴染」とは、「ヤフオク!において初出品された当時、まだ注目を集めていなかった時分からあなたが目を付けてウォッチリストに入れた時計」を指します。比喩的なあれです。
そして、あなたこと矢風奥夫の性格を一言で表わすと、優柔不断。これまで仲の良い友達としての関係を築いてきた3人の幼馴染たちとも、そろそろ微妙に男女の仲を意識する場面がちょいちょい発生してきた。あなたとしても、3人の中から誰か1人に絞らないと次のステップに進めないことは頭では理解しているんだけれど、誰を選んでもあっちゃ〜あっちにしとけば良かったと後悔しそうな気がして、自分では決めきれないのだ。どうせなら向こうから歩み寄ってきてくんないかなー告白してくんないかなー、だったら決めるのになーと思っています。
注)この場合、「向こうからの歩み寄り」とは「値下げして再出品」を意味します。
一方で、あなたは優柔不断なくせにわりとモテる。なので、本命たる幼馴染たちは横に置いておいて、その辺のポッと出の子たちにときどき軽くちょっかいをかけたりします。すんなりうまくいったらつまみ食いしちゃったりして。へへ。
注)「その辺のポッと出の子たち」とは、「特に以前から狙ってたわけではないんだけどストライクゾーンをかすったくらいの時計。相場より安く出品されているから目を引いたもの」という意味です。長えな。
ある日あなたが教室に入ったら、クラスメイトの声が耳に飛び込んできました。
「この間もさぁ〜、いかにも待ってますみたいな子がいたわけよ。でさぁ〜、いよいよ!ってなったらさあ、ドタキャンしてくるわけ。こっちはもう準備万端だったのによぉ〜」いかにも地頭の悪さが滲み出ている発言をしながら同意を求めてくるクラスメイトに、素人がピーチク囀りおる…、とあなたは鼻で笑ってしまいました。
注)1円出品で期待していた水準まで入札額が伸びないと、終了直前で出品取り止めされるケースはままあります。しかしあなた性格が悪くないですか。
そう、あなたは鼻で笑うのだ。焦ってブヒブヒ食いついちゃって、愚かな豚め、卑しい豚め、と。寸前まで待ってスマートにポチッと背中を押してあげるのが成功パターンなのに、と。でも教えてあげないけどね、と。
もちろん、そんなちょうどよい機会はいつでもそこらじゅうに転がっているというわけじゃない。でも一定の打率でもって成功してきた実績をあなたは持っている。世が世なら撃墜王と呼ばれてもいいくらいなのにね。
そんなわけで、あなたの欲はある程度満たされているからがっつくことはない。だって幼馴染たちもいつでも落とせる気がしているもんね。予行練習はばっちりなんだぜ!加えて、幼馴染たちは抜群の安定性を誇っている気がするから。あなたはこう考えています。幼馴染たちはそのうち向こうから俺にアプローチしてくるだろう。そしたら決めよう。なんならふたり一緒でもいいからとか言ってくるかもしれないよね。ぐふふ、と。
注)繰り返しますが、これは腕時計の話です。「向こうからアプローチ」とは「値下げして再出品」を指します。「ふたり一緒」とは、「ぐーんと値下げされたから1本分の予算で2本買えちゃう」と言う意味です。
そうこうしている内にも、季節は巡ります。梅の花が咲き、桜の花も、紫陽花も、金木犀も咲いては散って行った。そして椿の花も。当然その間、なんどもチャンスはやってきた。でも、決めきれなくて先送りにしてしまってきた。正直、ちょっと惜しかったかなという気持ちもあるっちゃあるんだけどね。
そんな折、あなたは、幼馴染の1人から、彼氏が出来たと報告を受けます。あなたは少しだけ動揺する。でもその感情を正面から受け止めきれないあなたは、「お高く止まっていたおめーに彼氏ができるなんて、見る目がないやつもいるもんだ」といつもの憎まれ口をたたき、ふんと鼻を鳴らすだけだった。そしてそっぽを向いてしまったのだ。それを聞いた幼馴染の顔に、月が雲に隠れるように一瞬寂しげな影がよぎったことをこれからもあなたは知らないままなのだ。
注)「なんどもチャンスがある」は、「だれも入札せずに出品期間が終わる」こと、「お高く止まっていた」とは、「初出品時から値段を下げない。状態も良いのでアリかなと思っていたけれども相場よりちょい高い気がして手を出しあぐねていた時計」を指します。
注)落札者がキャンセルして、2番目に高い札を入れた人に落札しませんか?、と連絡が来るケースもたまにあります。
続いて、なんやかんやで幼馴染の2人目にも彼氏ができます。あなたは焦ってしまう。でも少しだけホッとしてもいる。おれには3人目の幼馴染がいるからさ、もう悩む必要はないんだ。アイツに決めるんだ!
注)言うまでもなく、「彼氏ができる」は「時計が落札されること」を意味しています。これは時計の話ですから。暗喩ですね。
ところがその日、昔からほのかな憧れを抱いていたけれどどうせ手なんか届きっこないんだからと最初から諦めていた高嶺の花のあの子が、あなたに微笑みかけてくれたんです。名家出身でゴージャスな惠体ボディ。その瞳に見つめられて、途端に高速なビートを刻み始めたあなたの心臓。もしかしたら、憧れのあの子とうまくいっちゃうかもしれない。よっしゃ、まず高嶺の花のあの子にアプローチしてみて、駄目だったら3人目にいこう、とあなたはひとりほくそ笑みました。
注)「高嶺の花が微笑みかけてくれた」は、それまで40万円即決で長いこと出品されていたものが、5万円とかに引き下げられて再出品されたようなパターンです。ただし、即決価格は以前と変わらない。
あなたは果敢にアプローチします。でも、高嶺の花のあの子には当然他の男たちが群がります。そりゃあもう、ちゃぽんと水に入ってきた足裏に殺到するドクターフィッシュの如く。
奮闘むなしく、高嶺の花のあの子は他の男とくっ付いてしまった。残念だけど、まあ仕方ないよね、と肩をすくめるあなた。ベストを尽くした爽快感すらあるのだ。それになによりおれには3人目ちゃんがいるもんね。黒髪ロングで黒目がちな3人目ちゃんの控えめな微笑みを思い出します。ああ、おれはどうしようも浮気者であった、やはりおれには3人目ちゃんしかいなかったんだ、と後ろを振り向くあなた。
今にも走り出そうとしたあなたがそこで目にしたのは、つま先が細い靴にブラックなスキニージーンズを腰履きしてミディアムヘアの毛先を無造作(ランダム)にマンダムで散らしたチャラい男子大学生と3人目の幼馴染であった。彼女はチャラ男に手を回されてこんなとこでいやーんと慣れた様子でくねくねしている。それどころか、くるんとめくられてスケスケのあれを丸出しにされながら、もう〜こんなところで、と満更でもなさそうな表情を浮かべているのだ。
注)「果敢にアプローチ」とは、結構頑張って入札すること意味します。普段は5万円までと決めているところ、8万円…10万円…もう無理だあ、という水準まで。それから、「スケスケのあれ」とは腕時計の裏スケから覗くムーブメントのことを指します。何度も言いますが、これは腕時計の話ですよ。
ふと、彼女と視線が合った、気がした。慌ててあなたは下を向いてしまう。コツコツコツ、と響く足音。しばらくしてあなたは顔を上げ、周囲を見渡します。冬の夕暮れは一瞬で過ぎ去り、街灯に照らされた人気のない住宅街が浮き上がっているだけだ。生垣の隙間からちらりと、一軒家のリビングルームに飾られたクリスマスツリーが見える。小さいけれど,でも家族みんなで飾り付けされたであろうそれを。
そしてあなたは唐突に自覚するのだ。暗い夜道で。自分の周りにはもう誰も残っていないということを。あんなにたくさんいたはずの幼馴染たちは去ってしまった。友達と呼べる相手もいない。あなたはひとりなのだ。空気は冷え切っていて、吸い込んだ鼻の通り道が痛む。あなたはたったひとりなのだ。
どうやって家まで帰り着いたのかは覚えていない。いつものように朝起きて、学校に行き、週に数日アルバイトをする。そして惰性のように、その辺のポッ出の子に釣り針を垂らしてみてはつまみ食いする日々を繰り返している。刹那の楽しみはある。でも満たされない。心の底から笑った日はいつのことだったか、もう思い出せなくなってしまった。
あなたの脳裏に浮かぶのは幼馴染たちのことばかりなのだ。バイトの休憩時間で通学電車で、あなたはFacebookでInstagramでX(旧Twitter)で幼馴染たちの名前を検索してしまう。そしてアップされた写真を眺めてはため息をつくのだ。あんなに嬉しそうにあちこち連れ回されて着せ替えられていじくられて…巻かれて!あの日おれがアプローチしておけばあっさり決まったはずなのに。あそこに写っているのはおれの手だったはずなのに…!
あなたはあり得たかもしれないIFに耐えきれず、パソコンを開きます。そしてインターネットブラウザを立ち上げて呟くのだ。おれの方が先に目を付けてずっと狙ってたのにポッと出の馬の骨野郎に取られた、と。
注)「あの日おれがアプローチしておけば…」とは、出品期間が終了して再出品されたから、終了直前に札を入れたら当然落札できただろう、という意味です。
一体何を読まされているのだろうと思われたかもしれません。みなさんに僕の感情を余すことなくお伝えしようとしているうちに、図らずもトレンディなティーンネイジャーのラブストーリーになってしまった。伝わったでしょうか。。
なお、矢風奥夫(やふうおくお)は架空の人物であり、モデルはスマホの前のあなたたちでも、無論僕でもありません。あー良かった。
そして、思いつきでだいぶいい加減なこと書きました。オークションに出品されている時計を人間に例えちゃったりして、ご不快に思われた方いらっしゃったらすみません。



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が、読み返したところ、だいぶ舌足らずであった。もっとこう、少しでもみなさんの共感を得られるよう、僕は努力しなければならなかったのではなかろうか。反省しました。やり直させてください。
ということで、さあみなさん目を閉じて。大きく息を吸って。吐いて。さあ、想像してください。
あなたの名前は矢風奥夫(やふう・おくお)。イカしたティーンだ。
矢風奥夫ことあなたには、前々から気になっている複数の幼馴染がいます。そうです、複数です。1人ではない。ここでは3人としておきましょうか。タイプはそれぞれ違う3人。だけれども、みんな違ってみんないいのだ!くぅ〜。
注) ここで言う「幼馴染」とは、「ヤフオク!において初出品された当時、まだ注目を集めていなかった時分からあなたが目を付けてウォッチリストに入れた時計」を指します。比喩的なあれです。
そして、あなたこと矢風奥夫の性格を一言で表わすと、優柔不断。これまで仲の良い友達としての関係を築いてきた3人の幼馴染たちとも、そろそろ微妙に男女の仲を意識する場面がちょいちょい発生してきた。あなたとしても、3人の中から誰か1人に絞らないと次のステップに進めないことは頭では理解しているんだけれど、誰を選んでもあっちゃ〜あっちにしとけば良かったと後悔しそうな気がして、自分では決めきれないのだ。どうせなら向こうから歩み寄ってきてくんないかなー告白してくんないかなー、だったら決めるのになーと思っています。
注)この場合、「向こうからの歩み寄り」とは「値下げして再出品」を意味します。
一方で、あなたは優柔不断なくせにわりとモテる。なので、本命たる幼馴染たちは横に置いておいて、その辺のポッと出の子たちにときどき軽くちょっかいをかけたりします。すんなりうまくいったらつまみ食いしちゃったりして。へへ。
注)「その辺のポッと出の子たち」とは、「特に以前から狙ってたわけではないんだけどストライクゾーンをかすったくらいの時計。相場より安く出品されているから目を引いたもの」という意味です。長えな。
ある日あなたが教室に入ったら、クラスメイトの声が耳に飛び込んできました。
「この間もさぁ〜、いかにも待ってますみたいな子がいたわけよ。でさぁ〜、いよいよ!ってなったらさあ、ドタキャンしてくるわけ。こっちはもう準備万端だったのによぉ〜」いかにも地頭の悪さが滲み出ている発言をしながら同意を求めてくるクラスメイトに、素人がピーチク囀りおる…、とあなたは鼻で笑ってしまいました。
注)1円出品で期待していた水準まで入札額が伸びないと、終了直前で出品取り止めされるケースはままあります。しかしあなた性格が悪くないですか。
そう、あなたは鼻で笑うのだ。焦ってブヒブヒ食いついちゃって、愚かな豚め、卑しい豚め、と。寸前まで待ってスマートにポチッと背中を押してあげるのが成功パターンなのに、と。でも教えてあげないけどね、と。
もちろん、そんなちょうどよい機会はいつでもそこらじゅうに転がっているというわけじゃない。でも一定の打率でもって成功してきた実績をあなたは持っている。世が世なら撃墜王と呼ばれてもいいくらいなのにね。
そんなわけで、あなたの欲はある程度満たされているからがっつくことはない。だって幼馴染たちもいつでも落とせる気がしているもんね。予行練習はばっちりなんだぜ!加えて、幼馴染たちは抜群の安定性を誇っている気がするから。あなたはこう考えています。幼馴染たちはそのうち向こうから俺にアプローチしてくるだろう。そしたら決めよう。なんならふたり一緒でもいいからとか言ってくるかもしれないよね。ぐふふ、と。
注)繰り返しますが、これは腕時計の話です。「向こうからアプローチ」とは「値下げして再出品」を指します。「ふたり一緒」とは、「ぐーんと値下げされたから1本分の予算で2本買えちゃう」と言う意味です。
そうこうしている内にも、季節は巡ります。梅の花が咲き、桜の花も、紫陽花も、金木犀も咲いては散って行った。そして椿の花も。当然その間、なんどもチャンスはやってきた。でも、決めきれなくて先送りにしてしまってきた。正直、ちょっと惜しかったかなという気持ちもあるっちゃあるんだけどね。
そんな折、あなたは、幼馴染の1人から、彼氏が出来たと報告を受けます。あなたは少しだけ動揺する。でもその感情を正面から受け止めきれないあなたは、「お高く止まっていたおめーに彼氏ができるなんて、見る目がないやつもいるもんだ」といつもの憎まれ口をたたき、ふんと鼻を鳴らすだけだった。そしてそっぽを向いてしまったのだ。それを聞いた幼馴染の顔に、月が雲に隠れるように一瞬寂しげな影がよぎったことをこれからもあなたは知らないままなのだ。
注)「なんどもチャンスがある」は、「だれも入札せずに出品期間が終わる」こと、「お高く止まっていた」とは、「初出品時から値段を下げない。状態も良いのでアリかなと思っていたけれども相場よりちょい高い気がして手を出しあぐねていた時計」を指します。
注)落札者がキャンセルして、2番目に高い札を入れた人に落札しませんか?、と連絡が来るケースもたまにあります。
続いて、なんやかんやで幼馴染の2人目にも彼氏ができます。あなたは焦ってしまう。でも少しだけホッとしてもいる。おれには3人目の幼馴染がいるからさ、もう悩む必要はないんだ。アイツに決めるんだ!
注)言うまでもなく、「彼氏ができる」は「時計が落札されること」を意味しています。これは時計の話ですから。暗喩ですね。
ところがその日、昔からほのかな憧れを抱いていたけれどどうせ手なんか届きっこないんだからと最初から諦めていた高嶺の花のあの子が、あなたに微笑みかけてくれたんです。名家出身でゴージャスな惠体ボディ。その瞳に見つめられて、途端に高速なビートを刻み始めたあなたの心臓。もしかしたら、憧れのあの子とうまくいっちゃうかもしれない。よっしゃ、まず高嶺の花のあの子にアプローチしてみて、駄目だったら3人目にいこう、とあなたはひとりほくそ笑みました。
注)「高嶺の花が微笑みかけてくれた」は、それまで40万円即決で長いこと出品されていたものが、5万円とかに引き下げられて再出品されたようなパターンです。ただし、即決価格は以前と変わらない。
あなたは果敢にアプローチします。でも、高嶺の花のあの子には当然他の男たちが群がります。そりゃあもう、ちゃぽんと水に入ってきた足裏に殺到するドクターフィッシュの如く。
奮闘むなしく、高嶺の花のあの子は他の男とくっ付いてしまった。残念だけど、まあ仕方ないよね、と肩をすくめるあなた。ベストを尽くした爽快感すらあるのだ。それになによりおれには3人目ちゃんがいるもんね。黒髪ロングで黒目がちな3人目ちゃんの控えめな微笑みを思い出します。ああ、おれはどうしようも浮気者であった、やはりおれには3人目ちゃんしかいなかったんだ、と後ろを振り向くあなた。
今にも走り出そうとしたあなたがそこで目にしたのは、つま先が細い靴にブラックなスキニージーンズを腰履きしてミディアムヘアの毛先を無造作(ランダム)にマンダムで散らしたチャラい男子大学生と3人目の幼馴染であった。彼女はチャラ男に手を回されてこんなとこでいやーんと慣れた様子でくねくねしている。それどころか、くるんとめくられてスケスケのあれを丸出しにされながら、もう〜こんなところで、と満更でもなさそうな表情を浮かべているのだ。
注)「果敢にアプローチ」とは、結構頑張って入札すること意味します。普段は5万円までと決めているところ、8万円…10万円…もう無理だあ、という水準まで。それから、「スケスケのあれ」とは腕時計の裏スケから覗くムーブメントのことを指します。何度も言いますが、これは腕時計の話ですよ。
ふと、彼女と視線が合った、気がした。慌ててあなたは下を向いてしまう。コツコツコツ、と響く足音。しばらくしてあなたは顔を上げ、周囲を見渡します。冬の夕暮れは一瞬で過ぎ去り、街灯に照らされた人気のない住宅街が浮き上がっているだけだ。生垣の隙間からちらりと、一軒家のリビングルームに飾られたクリスマスツリーが見える。小さいけれど,でも家族みんなで飾り付けされたであろうそれを。
そしてあなたは唐突に自覚するのだ。暗い夜道で。自分の周りにはもう誰も残っていないということを。あんなにたくさんいたはずの幼馴染たちは去ってしまった。友達と呼べる相手もいない。あなたはひとりなのだ。空気は冷え切っていて、吸い込んだ鼻の通り道が痛む。あなたはたったひとりなのだ。
どうやって家まで帰り着いたのかは覚えていない。いつものように朝起きて、学校に行き、週に数日アルバイトをする。そして惰性のように、その辺のポッ出の子に釣り針を垂らしてみてはつまみ食いする日々を繰り返している。刹那の楽しみはある。でも満たされない。心の底から笑った日はいつのことだったか、もう思い出せなくなってしまった。
あなたの脳裏に浮かぶのは幼馴染たちのことばかりなのだ。バイトの休憩時間で通学電車で、あなたはFacebookでInstagramでX(旧Twitter)で幼馴染たちの名前を検索してしまう。そしてアップされた写真を眺めてはため息をつくのだ。あんなに嬉しそうにあちこち連れ回されて着せ替えられていじくられて…巻かれて!あの日おれがアプローチしておけばあっさり決まったはずなのに。あそこに写っているのはおれの手だったはずなのに…!
あなたはあり得たかもしれないIFに耐えきれず、パソコンを開きます。そしてインターネットブラウザを立ち上げて呟くのだ。おれの方が先に目を付けてずっと狙ってたのにポッと出の馬の骨野郎に取られた、と。
注)「あの日おれがアプローチしておけば…」とは、出品期間が終了して再出品されたから、終了直前に札を入れたら当然落札できただろう、という意味です。
今日はシチズン ザ・シチズン第二世代
一体何を読まされているのだろうと思われたかもしれません。みなさんに僕の感情を余すことなくお伝えしようとしているうちに、図らずもトレンディなティーンネイジャーのラブストーリーになってしまった。伝わったでしょうか。。なお、矢風奥夫(やふうおくお)は架空の人物であり、モデルはスマホの前のあなたたちでも、無論僕でもありません。あー良かった。
そして、思いつきでだいぶいい加減なこと書きました。オークションに出品されている時計を人間に例えちゃったりして、ご不快に思われた方いらっしゃったらすみません。



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