会社で働いていると、自分のケツを拭いてもらっていることに気付いていない人に出会いますよね。そういう人間は強い。罪悪感ゼロで自信満々、他人のせいにできちゃうもんな。だから偉くなっていくんですよね。僕はサラリーマン生活もそれなり長くなり、それにしたがって心の中の(会社キャリア的に)殺してやるリストも少しずつ長くなっていっています。あーあいつらまとめて首にしてやりたい。ある日突然ぼくが偉くなったりしないかな。オホーツクあたりに転勤させてやるのに。昔のサラリーマン漫画にありますよね。会社の入り口を掃除している小汚い老人が実は…!、的な。ぼくもその老人に見込まれて急に偉くなっちゃったりしないかしら。

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想像してください。貴方は冴えないサラリーマン。人に優しくしなさい、と公務員の両親に育てられたからか、真面目が取り柄のサラリーマンだ。頑張って勉強したのでいい感じの大企業に入れたものの、不器用で要領も良くないからも社内での評価は特に高くないし、モテない。

今日も今日とて会社に行く。あくびを噛み殺して、ため息を押し殺して。会社のビルの入り口では、毎朝くたびれたツナギを着た老人が箒とちりとりをせこせこ動かしている。トラディショナルな掃除員。

と、貴方の前を、会社の同僚たちが歩いています。

貴方とは違い、わしら大企業エリートサラリーマンだもんね、と肩で風を切っている彼ら。夜な夜な銀座コリドー街あたりに繰り出してテキーラショット片手に丸ノ内OLちゃんを引っ掛けているのだ。貴方が門前仲町とか錦糸町だとか下町の10分1500円くらいの姉キャバで管を巻いている時間に、連中は西麻布だか六本木だかのディスコ的なクラブに出没してはトイレ横とか階段の下の薄暗がりでいかがわしいことをしているのだ!

貴方が彼らの所業に詳しいのは武勇伝のごとく会社でフロアに響き渡る大声で話すもんだから、耳に入ってきてしまうから。別に聞き耳を立てているわけじゃないんだけどね、悔しいことに成功率も高いらしい。

そんな感じに傲慢な連中だもんだから、会社の入り口を掃除している老人の前に紙クズとかバナナの皮とかタバコの吸い殻とかぽいって放り投げて、おいじじい捨てといてよぎゃははー、と言い捨てるんだ。けしからん。そいつらと朝帰りしたらしい受付嬢のかわいこちゃんも、ヤダーおじさんかわいそうーケラケラ、なんて一緒になって笑っている。新入社員のときはあんなに清純で黒髪パッツンだったのに…。

貴方は朝っぱらから嫌なものが視界に入ってしまった…とため息を吐き、清掃員の老人に向かって、おはようございます、とごにょごにょ口の中で声をかける。そしてビルディングのエントランスの扉をくぐるのだった。と、後ろで老人が誰かに向かって、おやおや悪いねえ、と声を掛けているのが聞こえたような気がする。

そんな日々が続いた後、社員集会が招集されるのだ。壇上には見覚えのない若いイケメンと、見覚えのある老人。ざわつく会場。みなさん、と口を開くイケメン。「ワタシは新入社員でハーバードを卒業してからこの会社にやってきました。だから9月入社で、だからワタシの顔を知らない人たちも多いでしょう。で、この会社に入ってから大変残念な行為を見たんです。まったく嘆かわしい!ハーバードではこんなこと無かった。この会社は日本社会の悪いところを煮て集めたようなところだ!ファッキンだ!汚水を固めた煮凝りだ!」

イケメンは壇上をプレゼン中のジョブズのように歩き回りながら、身振り手振りを交えながらいかにファッキンであったか、いかに貴方たちがハーバードじゃ通用しないかを語っている。絶妙に短いスラックスの裾から生くるぶしを覗かせながら。ワイシャツの胸元の盛り上がりを強調するように時折腕を振り回しながら。

すると、「おめーなに生意気いってんだよー。群衆からヤジが飛ぶ。「何もわかってねえ新入社員ごときが」チャラい同期が口を尖らせていた。「ハーバードだかブルーバードなんだか知らねえが、帰ってママのしなびたおっぱいでも吸ってな!」

「なんだと…!」新入社員のワイシャツは膨れ上がる。

「そこまでにしておきたまえ」スッと片手をあげる老人。いつものくたびれたツナギではなく、こぎれいな三揃い姿である。「ああん?下働きの掃除じじいはすっこんでろよ」「ほうきとちりとり忘れてるわよーキャハハハー」

「きっさまー、会長に向かって!」新入社員のワイシャツの胸元は怒りでさらに膨れ上がり、いまにもボタンが弾け飛びそうだ!「専務、いいんじゃよ」新入社員の肩に手を置いて、ふるふると首をふる老人。

そうです。ハーバード出身の新入社員は入社まもなく専務に昇進してたのです。え、てか、会長?ハーバード出身新入社員こと専務は清掃員の老人のことを会長と呼んだ?毎朝会社の前を箒とちりとりでぼんくらに掃除していたトラディショナル清掃員の老人が、会長?

壇上に歩み寄る清掃老人こと会長。会長にそっと肩を押されて、新入社員専務が口を開きます。

「ワタシへの暴言は聞かなかったことにします」「ただ、会長に対して無礼を働いた者は許せない」「いやいや、ワシのような老人への暴言こそ気にしてもららんでいい、それより専務への態度を改めさせるべきじゃ」「会長…」「専務…」

ひとしきり盛り上がったあと、くるり、とこちらに向き直る専務。

「……会長は、一代で築き上げたこの会社とそこで働く社員たちを我が子のように慈しみ、毎朝清掃されていました」「そんな会長を馬鹿にし、積極性にいじめた人がいます!」

糾弾される同僚たち。そのままオホーツクへの辞令が下される。顔も青ざめている。あちゃーかわいそうに。でもまあ、正直スカッとするよね。ざまぁ!、と溜飲を下げる貴方。と、くるりとこちらを向き直る専務。

「そして、見て見ぬふりをした人もいます!」「そうじゃな、南米で倉庫番でもしてきたらええじゃろう」えええー。

こうして僕は南米に来たのでした。嘘ですけど。

ここまで読んでくださった方は、いったい何を読まされたのか、と首を傾げていらっしゃることでしょう。僕もよくわかりません。残業続きでカッカした頭から荒ぶる感情が迸ってしまった。どうもすいません。

しかし、せめて想像の中だけでも急に偉くなって気に入らない連中を首にしたりギャフンと言わせたりしたいよね。ただ、僕も20年以上サラリーマンをやっている男、そんな上手い話はないことを実体験として知ってしまっている。少なくとも、そんなうまい話は僕のところにはやってこない。きっと貴方のところにも。

今日はミドーのワールドタイマー

今日はミドーの80年代の名品ワールドタイマー。子供の誕生日会で遊園地にきました。カッカした気持ちで遊園地にいきました。

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消防車のハリボテの上に乗って板に向かって防水するアトラクションがありました。なんだそれ

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