2014年のアップルウォッチ登場を皮切りにウェアラブル端末の普及は進みました。その結果として、両腕に腕時計ないしはそれに類する端末を着用する行為「ダブルリスティング」もすっかり世界に浸透……してないな!?
あれえ〜、街行くみなさんは腕時計又はスマートウォッチのどちらかだけじゃん。あるいはどっちも着けていない。一体どうしたことか。
これはわたしの感覚的なものではありません。わたしはみなさんに衝撃の事実をお知らせしなければならない。

ええ〜、クラスに男子は僕ひとりって本当ですか!みたいなことですよ。
衝撃!日本のダブルリスティング人口は推定「40人に1人」なのだ!
根拠となるデータを見てみましょう。
まず、スイスのデロイトが発表した調査(Swiss Watch Industry Study 2022)によると、「伝統的な腕時計とスマートウォッチの両方を所有している人」は全世代で約20%程度。そして、その両刀使いのうち「同時に着ける(ダブルリスティング)」と回答したのはわずか16%です。掛け合わせると、全世界でのダブルリスティングの割合は約3%。
さらに、日本国内に焦点を当てたクロス・マーケティングの「腕時計に関する調査2024」を見ると、国内で腕時計とスマートウォッチの両方を所有している人は最大でも全体の15%。前述の比率を当てはめると、日本におけるダブルリスティング実践者は最大で約2.4%となります。
つまり、ダブルリスティングは日本人口のせいぜい2%、すなわち40人に1人。クラスに1人いるかどうかのレアリティです。クラスに1人ですよ?もしクラスに男子が1人きりだったらどうですか?それなんてエロゲ、ですよね。
出典:デロイトSwiss Watch Industry Study 2022 https://www.deloitte.com/content/dam/assets-zone2/ch/de/docs/industries/consumer/2024/deloitte-ch-en-swiss-watch-industry-study-2022.pdf
出典: クロス・マーケティング腕時計に関する調査2024
でもおかしくないですか?世の中にはさまざまなファッション誌があり、ガジェット雑誌もあり、腕時計専門誌もある。腕時計を得意とするYouTuberやSNSインフルエンサーだっている。もちろん腕時計メーカーも。その辺の方々が一生懸命普及に努めた上での40人に1人?サウナ時計が売れた、指輪ウォッチが売れたっつって喜んでる場合ですか…?だからわたしは怒りとともにこの文章を綴っているのです。
誰がためのダブルリスティング…ダブルリスティングは誰のものか?
そう、わたしは怒っていますよ。ダブルリスティングを普及させるべき立場の方々の中に、あろうことか足を引っ張っている者がいるのだ!
わたしの最近心もとない頭髪はざんばらに乱れ、以前よりも広がった額にはところせましと血管が浮き上がっているのだ。おのれ……Esquire(エスクァイア)……!
誤解を恐れずに結論から言い切りましょう。Esquireが悪い。わたしはインターネットを駆使して、過去数年のダブルリスティングを取り上げた雑誌の記事を探しました。
- ニューヨークタイムズ(2019年11月6日付記事)「Why Justin Bieber, Chris Pratt and Offset like to “Double-wrist”」
- HODINKEE (2021年11月20日付記事)「ダブル・リスティング 腕時計を両手づけするためのガイド」
- ファイナンシャルタイムズ(2022年8月31日付記事)「The timely trend for wearing two watches」
- Esquire (2023年4月6日付記事) 「両手首に腕時計を着用するダブルリスティングの正統性を考察する」
- Australian Financial Review(2025年11月30日付記事)「How “Double-wristing” became the new trend for men」
これらを拝読した結果、ダブルリスティング普及の阻害要因のひとつがはっきりと分かりました。おしゃれの代名詞のようなハイソ誌・Esquireがダブルリスティングを独り占めしようとした結果、敷居が高いものとして認知されてしまっているのです。
いや、わたしもね、最初はおっと思いました。あのEsquireが、ダブルリスティングを取り上げたのですよ。わたしもうむうむと頷きながら頁をめくったものです。ウィリアム皇太子やヒュー・グラント氏を例に出し、ついに一流ファッション誌もダブルリスティングを認めたのだ!……と快哉を叫びかけたのも束の間。本記事の結びを見て、僕のセンター試験現代文満点の読解力がアラートを鳴らしました。この一文です。
「ただのひけらかしには、目も当てられません。さて、“ダブルリスティング”をするに当たり、いくつか留意しておくべき点はあるでしょう。まず、グラントやウィリアム皇太子のように、時計に備わるストーリーは重要です」。そして、あまりにも派手なものは避けるのが賢明でしょう。(中略)「高級時計をこれ見よがしに見せびらかすのはいただけない」ということです。
……おっと、「目も当てられない」ときましたか。要するに連中、「ぼくたちは重厚なストーリーがあるからダブルリスティングしてもいいんだよねー、それ以外は単なるひけらかしだよねーみっともない」と言っているのだね!私にはそう読めました。先生〜、Esquire君がダブルリスティングを独り占めしようとしてます!
だってね、ずっしり重ためな自分のルーツに関わる理由で常に2つの時間を表示させてるとか、「父から受け継いだパテックフィリップ」みたいなエピソードとか、われわれ普通のサラリーマンが持ってるわけない。みなさんはいかがですか?せいぜい初ボーナス記念、結納返し、子供が産まれた記念、あたりでしょ。せいぜい、とか言っちゃってすみません。興奮して語彙が乱れました。はあはあ。
日本に元気があったあの時代、月亭可朝は歌いました。ボインはおとうちゃんのもんとちがうのんやで、と。そうやで!ダブルリスティングもEsquire者だけのもんとちがうのんやで、おとうちゃんたちみんなのもんなんやで!
ストーリー持たざる者は幸いである
たしかにわれわれは「ストーリー持たざる者」かもしれない。Esquire のような「歴史」「重厚さ」がストーリーの定義だとしたらね!
でもね、1年間悩みに悩んで決断しました、良いじゃないですか。購入資金を捻出するためタバコを止めることにした、たいしたもんです。新婚旅行先で一目惚れしちゃいました、素晴らしいストーリーです。
例えばわたくしの手持ちの時計に備わるストーリーもいくつかご覧ください。
- ヨメさんの実家に泊まっている時、「散歩してきます」と言って家を出て、タクシーでハードオフに直行して買いました(ボストーク・ヨーロッパ)
- ヨメさんと出掛けた際、「一蘭でラーメン食べてくるね」と言って一蘭を素通りして隣のパルコに入っていたTICTACまで走りました(セイコー×ナノ・ユニバース)
- 父親の還暦祝いにするからとヨメさんに言って購入。しばらくして、父親に聞いたらいらないと言われたので自分で使うことにするね、と説明。なお、父親には最初から万年筆を贈る予定だったので聞いてもいません(カンパノラ天満星)
- 旅行先で気が大きくなって買いましたが、帰国したら止まってしまった。中を開けたら液漏れで壊れていました。しかもRONDAのポン載せ。腹が立ったので自分でムーブメント取り寄せて交換したところ針が曲がって文字盤に傷が入りました(N.O.A IRIS)
若干ぼくの人間性に疑問符が付きそうなものも混じっていますが、こんなんでも時計にまつわるストーリーです、と胸を張って喜んでる人間がいる、そのことをお伝えしたかった。
そもそも自分で選択して自分で判断した、それ自体が立派なストーリーじゃないですか。みなさんがバブバブの頃に、わあ〜自分で決められてえらいね〜パチパチ〜、と褒められたのを思い出してください。決めただけでも偉いのに、今じゃ自分で働いたカネで払ってるんですよ。もっと偉い。自信を持ってください。
特別なことはいらなかった。その時計を買った時の記憶、その時計を着けていた時の出来事を思い出して、もう一度自分の時計を好きになる、それだけだったんだ!ストーリーを持たざる者だから辿り着けたこの真理。いまのわたしにはEsquireに対する感謝しかありません。
右の腕をスマートウォッチに取られたら…?
スマートウォッチという黒船に揺れる腕時計界。ただ、誰が「スマートウォッチをやっつけろ」と言ったのでしょうか。まったく、血の気の多い連中だぜ!
共存共栄の道は無いのかい?そう、神はヒトに右腕だけでなく左腕も与えたもうた。その意味とは何でしょうか?
歴史にIFはありませんが、もしも天才時計師ブレゲ氏が200年とかケチなこと言わずにばーんと1500年くらい時計の歴史を早めていたとしたら。そしてもし聖書に続きがあったならば、こう書かれていたはずです。「右の腕をスマートウォッチに取られたら、左の腕を機械式に差し出せ」とね。「逆もしかり」と続いたことでしょう。「クオーツでも可」とも。そう、僕らにはダブルリスティングがある!
しかし相変わらず、Google検索バーに「両腕 腕時計」と入れると、まっさきに「腕時計 両腕 ダサい」と予測変換が表示されます。そのダサいものとする先入観も、ダブルリスティング普及を妨げるもう一つの要因である。
はっきりさせておきましょう。ダサいのは高級時計を見せびらかして羽振りの良さを自慢するその心根であり、天空X字拳がごとく顔の前で両腕をクロスさせるポージングである。両腕に着ける行為自体はダサくないのである。
それからこれは言っていいものか悩みましたが、Esquire者は時計ではなくてその重厚なストーリーを自慢していると思うんですよね。「えーなんで2本着けているかって?こっちは父親から受け継いだんだよねホラうちの家って代々続く爵位持ちだからさ……」、と続くわけでしょ。そのストーリー自慢がダサい。ひけらかしには目もあてられません。
そこへ行くとわれわれストーリー持たざる者は、(1)その腕時計が好き、それから、(2)その腕時計を選んだ僕らの審美眼を褒められたら嬉しい、そんだけ。そうでしょ?基本ひとりで眺めてるだけ。Esquire者と比べてください。足元で尻尾振ってるワンちゃんみたいなもんです。いじらしいもんでしょうが!
まとめ
もちろん、GQ誌がエチケット違反と書いたり、海外のウォッチフォーラムのディベートで「機械式時計業界をまた危機に陥れる気か?」と反対派の重鎮がキレていたりと、まだまだダブルリスティングが世界に浸透するの容易ではない。世界を変えるのはかくも難しいのだ。
さて、最後に、わたしのダブルリスティングリストショットをいくつかあげておきます。みなさまの参考になれば幸いです。

トレーサーMIL-Gのエヴァンゲリオンコラボとxiaomi mibandのエヴァンゲリオン初号機フェイス

レビュートーメンレビュースポーツ30sとxiaomi miband。

ブライトリングコルトA57035とxiaomi。なんとかして両腕をまっすぐ伸ばして撮りたかったんですよ。ただのギャルのポーズになってしまいました。

だいたいこんな風になっちゃうんですよね。顎にiPhone挟んで撮るもんだから。

xiaomiのシャッター機能を使っていた時期もありました。が、いずれにせよiPhoneを顎に挟むからどこ撮ってるのか分からない。

東京だと周りに人がいない時間が深夜くらいなので、恥ずかしくてダブルリスティングの写真があんまり撮れないんですよね。顎でiPhone挟まないといけないから。
かように顎でiPhoneを挟みながら、常々わたしは思っているのです。こんな弱小ブログであっても草の根的に「ダブルリスティングはかっこいい」と言い続ければ、そういうもんかと思う方が増えるかもしれない、世界だって変わるかもしれないって。
世界を変えるのはハードルが高い。サカイを変えるのとはわけが違うのです。酒井くらいなら僕でも変えられるかもしれないもんね。「コラー酒井ー!」とか言って。なんつってね!
ということで、さあ、みなさんも明日からも大手を振って両腕「巻いて」いきましょう!
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